見出し画像

報酬ハック〜ビジネスの構造を理解して報酬をアップする方法〜

今回、お話する「報酬ハック」とは、ビジネスの構造を理解することで報酬アップを狙うというものです。

しかしながら、「どのように営業して、どうやって高単価の案件を取るか」という話をしたいわけではありません。つまり研修が目的であり、営業マン向けではありません。

「そもそもビジネス構造上、報酬とはどのように成り立っているのか」について、俯瞰し理解してみましょう。

すると、本質が見えてくるはずです。簡単な例えを出しますと、「売り上げが1円もない、でも働いた分報酬ください」というのは成り立ちませんよね。

これは経営者なら当たり前にわかりますが、労働者からしたら「一時間当たり1000円~1500円くださいよ」と言いたくなる気持ちも自然です。法的にも最低時給の支払いなど当然の義務であり権利ですね。

したがいまして、こういった部分は言い合いになりやすいです。とはいえ、売上がゼロなのに最低時給を請求し続けたらいつか倒産します。そのビジネスはサスティナブルではないですよね。

ここで、ちょっと1回俯瞰してみましょう、というのが今回のお話だと思ってください。

自己紹介

事業投資家の林周平(@HayaShu88)と申します。10社のグループ企業の経営と林経営塾を主催しています。

本記事はこういう人におすすめ!

本セミナーをおすすめできる対象は、報酬を増やしたい人です。例えば起業家の方やフリーランスの方など、自分で事業を決められる立場の方です。オーナーシップを持って報酬の構造についての話を進められる人にとっては特に、使える内容だと思います。

あとは、客単価を高めたい営業の方経営者の方にもいいかなと思っています。

そして、僕はこの部分を重要視していますが、「支払うべき報酬の決め方」について悩みがある場合に役立てていただけると考えています。

結構悩みますよね。特に僕は常に座組をする担当なので、事業企画をしていろんな人を巻き込むことになります。

さらにテーマが共創ですから、色々な人たちとどういう利益配分をしようかな、ということをずっと考えています。大体週に2回ぐらいそういうお話をする機会があるんですが、その際に一番納得感があるのはやはり「ビジネスの構造から語る」ことです。

そういった意味で、外注への発注やディレクションを行う方、もしくは利害関係者の方とフェアに長期的な関係を築きたい方にも報酬ハックの考え方は向いています。

報酬を一時的にぐっと上げたい、短期的に営業でいかに高単価を取るかという話ではありません。ビジネスの構造として、どうやってその報酬が本質的に成り立つのかについて学びたい方向けの内容です。

さらには、僕のようにビジネスの設計をする方にとっても役立つはずです。つまりPLの構造を設計する事業企画の方・経営者。もしくは管理会計やKPIを取り入れ、数値の見える化・仕組み化をしたい方にもうってつけの内容になっていると思っております。

【Section1 報酬のはなし】

皆さんの会社で、以下のようなことはないでしょうか?

例えばスタッフの方、もしくは業務委託の方も含めた、普段の仕事関係の人たちがいて、その人達が「社長、こんなに頑張ってるのにこの報酬では成り立たないですよ」と要求するものの、経営者側は「なぜ、報酬を上げなきゃいけないんだろう」と考えてしまうような事態です。

報酬は払う側と貰う側で捉え方が180度異なる

この事態がなぜ起こるのでしょうか。まず、大前提として、報酬とは払う側ともらう側で捉え方が180度違うということを知っておくべきです。

スタッフからすれば、報酬はもらうものです。会社からしたら人件費、つまりコストです。

これは経営者からすれば当たり前ですが、働き手の方も理解しないと話が進みません。報酬とか給与と表現すると、「みんながもらえるもの」と捉えられます。ところが人件費とは「支払いが発生するもの」です。

では、どうやって人件費は払われるのでしょうか。

経営者は二重人格を持っている

経営者は二重人格を持っています。これは経営者自身も理解すべきですし、経営者に報酬アップをお願いしたい人、フリーランス(他者の経営者に対して報酬アップをお願いする立場)としてお仕事の取り方をされている方も同じように捉えていただきたいです。

経営者個人の思いとして、「よし、お前のことをこき使ってやろう」とか、「お前を貧乏にしてやる、不幸にしてやる」という考えはほぼないはずです。どうせなら、働いてくれる人が豊かになってほしい、とか「給料を上げてあげたいな」と思うわけです。

しかしながら、給料を上げると人件費が上がり、営業利益が下がります。そして経営的な思いとしては、人件費を抑えたい。例えば皆さんも、月に一度PLを見たりしますよね。試算表とかを見たときに「人件費が増えてるなあ」「どうにか抑えられないか」と思うことはないでしょうか。

つまり、経営者は「給与を上げてあげたい」「人件費を抑えたい」と、めちゃめちゃ相反した考えを持っているんですね。これが二重人格です。

逆に言うと、この二重人格を攻略できれば経営者も納得した上で報酬を上げる合意形成が取れるはずです。給与の交渉という綱引きにおいて、優秀な人がよくやる「給料あげてくれないんなら、僕辞めますよ」みたいなWin-Loseの関係にならなくて済む。

経営者の二重人格をハックすることによって、経営者も報酬を上げたくなるし、貰う側も合理的に上げていけるのです。

経営的な人件費の捉え方

ここでPL(損益計算書)について考えてみましょう。PLの中ではまず売上があります。そして原価があり、その下に粗利がありますよね。

そして販管費があり、その中に人件費がありました。つまりコストとしての報酬はPL上、販管費の部分に位置するということです。

人件費がそもそもコストだと理解した上で、PLの構造を考えると、本業の儲けを表すのが営業利益です。例えば不動産収入とか持続化給付金は本業とは違う収入なので、営業外収益です。

したがって「営業利益をいかに上げるか」について考えることこそが、労働者にとっても経営者にとっても1番の指標(KPI)となるでしょう。

PLに目を戻すと、様々な要因があって最終的に経常利益が出ます。今回は会計の話だけであるため、細かい部分は省いております。

売り上げから各コストが上から順番に引かれていき、最終的に営業利益が残るという構造ですね。ということは、この構造からは「経営意識は常に『売上アップ』と『コスト削減』という2択を迫られた状態である」ことがわかります。

経営者はこの二つの使命を負っている、と理解できれば、この構造に合わせた話をしてあげることができます。するとこの構造上「人件費の上限」とは「粗利」のことになるとわかります。

例えば、売上から原価が引かれて粗利が残りました。売上が100あるとして原価が10なら粗利が90です。粗利が90ってことは、どうひっくり返っても90しか配分できないわけです。90以上を配分しようと思ったら、何かを削らないといけません。それはもしかしたら資本金かもしれないし、銀行借り入れかもしれません。すると赤字になってしまいます。

単年とか2年ぐらいならそれでいいかもしれませんが、20年・30年も赤字では存続できません。赤字が成り立つにも銀行の融資なんかが必要であり、融資が無限に続くことはありえません。

ちょっと急に経営者目線の言い方になってしまいましたが、構造的に「人件費の上限は粗利である」という考えを頭に叩き込めるといいですね。これは建て替えようがない事実だからです。

言い換えると、人件費とは営業利益を生み出すための「投資」なので、経営者は人件費のことをそのように見ているわけです。

あなたの報酬はどこから来るのか

続いて働き手の目線です。

まずお客さんがいて売り上げが入ります。そして売り上げを取ってくるのは、営業さんたちです。営業さんたちに感謝するべきですね。

そして営業さんたちにリードを送ったり、より売れるような仕組み、ライフタイムバリューを軸に売上や集客に貢献するマーケティングの皆さんがいます。ここでもマーケティングの皆さんに感謝したいですね。

そして、それらを運営するためにはバックオフィスが必要です。事務方の皆さんは、顧客名簿の管理などをします。こちらにも感謝です。

最後に、経営の管理者、つまり経営者、事業企画者がいます。

ここで怖いのは、逆ピラミッド型の下の方(経営管理)へ行けば行くだけ売上が見えなくなってしまうことです。例えばバックオフィスの人が「営業の人がめちゃくちゃなこと言うんですよね」みたいなことを言い始めることがあるでしょう。でも、ちょっと待ってください!全ては売り上げから始まっているんです。

営業が取ってきてくれた売上という源泉があり、あなたというバックオフィスのところまで水が引かれているわけでして、これが大前提です。ただ、「営業が偉い」と言いたいわけではありません。営業を起点として考える組織にしないと、訳がわからなくなってしまいます。

この部分がおろそかにされると「だって働いてるのは私なんだから、給料ください」「こんなに頑張ってるのに」という先程の会話が起こります。

その場合、事業の構造をもう一度考えてもらわねばなりません。売上があって粗利がある。粗利から人件費を引いて……と続けば、そもそも売上がなければバックオフィスなんて存在すらできないはずです。という会話を、もう少し柔らかい口調でしていくと良いかもしれません。

全ての企業は、売り上げを起点にできています。そしてスタートアップはそうではないため、僕はあまり好きではありません。スタートアップは資本をどこかから引っ張ってくれば良いという考え方ですね。外部の投資を前のめりに、という考えであれば、別にPLが赤でもいいわけです。

僕はその部分があまり受け入れられなく、倫理感が崩壊してしまった気になりました。

ともあれ、営業スタッフ以外も顧客や売り上げを意識する組織文化を作ることは非常に重要であるとわかっていただけたと思います。これができれば、話がすれ違いづらくなるでしょう。

もちろんこれだけが全てではないため、「売り上げがないからお前には給料が払えん」などという話は当然成り立ちません。

ただ、商いの本質って何だろうと考えた場合、上記の考えを外すことはできないはずです。したがって、まずこの考え方を前提に持ちましょう。

ここから先は

6,506字 / 1画像

¥ 9,800

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?